HRテック(human resources technology)領域も、ご多分に漏れず活況を呈しています。2016年、アメリカではHRテック領域に対して20億ドル以上が投資されており、この傾向は過去5年間一貫して続いているようです。その対象は、人事管理システム、人工知能、ソーシャルリクルーティング、ウェアラブルデバイスなど多岐にわたります。今後さらに成長するであろうHRテック領域において抑えておきたい8つの動向についてご紹介します。*1

1.パフォーマンス管理の変化・発達

アメリカにおいて、パフォーマンス管理はここ5年でデータドリブンかつチーム優先になり、個人単位での細かい評価を追わなくなっています。そこで現在、チームの動きが目標にどのように貢献したのかを、自動で、もしくは手軽に計測できるシステムが注目を集めています。ゲーミフィケーションをふんだんに取り入れUI面もかなりの配慮が見られ、他のHRツールとの連携も強化されており、アカウントの切り替えをすることなく評価業務を手軽に行えるようになっています。

具体的なプロダクトとしてPerformYardが挙げられます。ユーザーは、PerformYardを使い、日々のタスク管理を簡単に行うことができ、マネージャーはその進捗状況を自動的に受け取ることができ、経営陣は、それらの動きが業績にどのように貢献しているのかをダッシュボードで確認することができます。

performyard管理画面

2.従業員エンゲージメントの測定と分析

顧客の流入経路や売上推移などの管理、分析は長年にわたり開発されてきました。人手不足が深刻化している現在、従業員に対しても同じような取り組みが必要とされています。組織変更、戦略変更などのイベントを軸に、従業員がどのように感じ、動いたのかを情報として管理、分析し、従業員をより一層理解しようという取り組みです。現在アメリカで人気を集めているソフトウェアが、UltiProです。

UltiProは、給与計算などの事務処理の自動から始まり、現在では従業員の学習、スキル開発をサポートするサービスとして知られています。感情分析なども行い、詳細なレポートを提供してくれるサービスです。

3.「人」の分析による将来予測

人に焦点を当て、分析、さらには予測するサービスは、まさに破壊的技術として広く受け入れられようとしています。今までHRテックと言えば、給与計算や労務管理を自動化するものが主流であったものが、現在は高度なレポーティング、ダッシュボードによる将来予測をするものが増えてきているのです。

Oracle、SAP SuccessFactors、Workday、ADP、Cornerstoneなどが提供するサービスでは、日々の勤怠管理から、パフォーマンスを発揮しない従業員や、転職を検討しているであろう従業員を予測し、彼らに適切な学習やコミュニケーションの機会を提案します。今までは自社開発により同様のシステム構築を目指していた企業も、システムの高度化に伴ってOracleをはじめとするベンダーからアプリを購入する方向に舵を切っているとのことです。

別の企業によるサービスでは、従業員が業務時間中に身に着ける「Smartバッジ」を提供。従業員の場所と声から、何をしているときにどんなストレスを感じているのかを分析して、ストレス軽減、生産性向上に貢献する適切な提案を行います。

ストレス以外にも、従業員のメールを分析し、その内容を自動化したりルール化することで、大幅に業務時間を削減する、といった事例も出ています。特に従業員数が多い企業ほど、こういった分析に対してコストを割くと効果に繋がりやすいでしょう。

4.従業員の「学習」の最適化

従業員の学習システムは多数ありますが、今後動画による学習がますます盛んになっていくでしょう。マネージャーが、従業員に対してみるべき動画を指定して、閲覧したかどうかを管理するためのものではなく、従業員自身が自分の学習経験を蓄積していくプラットフォームに注目が集まっています。

学習経験を、まるでYoutubeを見ているときのようなユーザー体験(個別性のある動画おすすめなど)に変えていく可能性を秘めています。すでにLinkedinLearningなどをはじめとする複数のベンダーが存在しています。学習する時間も場所も自由。今後ビジネスマンの学習の主流になるかもしれません。

5.採用活動の一元管理

Deloitteの調査によると、アメリカの採用・人材獲得のための市場規模は2.5兆円ほどとされています(日本では求人広告が1兆円、職業紹介が2000億円強、アメリカの半分くらいでしょうか)。適切な求職者との出会い、求人票を各メディアに掲載する際の自動化システム、求職者スクリーニングなど、様々な採用業務支援サービスが存在しています。

採用によって企業活動は大きく揺れ動くため、これらの活動は非常に重要視されています。特に現代では、優秀なエンジニアやマーケターをどれだけスムーズに採用できたかが大きく業績を左右することも少なくありません。

SmartRecruiters、Lever、Greenhouse、Gildなどのベンダーによって、広告管理などの集客面、オンライン面接や面接管理、候補者評価システム、候補者とのコミュニケーションなどを一元管理するプラットフォームが提供されています。これらのツールはLinkedInをはじめとるするいわゆる求人ポータルに直接接続できるように設計されており、求人ポータルごとの分析も簡単に行うことができます。

6.転職活発層との出会い創出

アメリカ政府によると、労働者の40%は条件次第では転職したいと考えており、仕事情報を探しているといいます。こうした、転職を積極的に検討する層との出会いは、人事において非常に重要です。日本でも40%まで行かなくても、2割、3割の人たちがこの層に該当するのではないでしょうか。

転職を検討している人たちへの人事の対策として、2つの手段が考えられます。1つは、自社の従業員管理をしっかりと行う(前述の「従業員エンゲージメントのフィードバック」のように)ことによって、転職を防ぐことです。もう一つは、こういった人たちが利用するサービスに自ら出向くことです。アメリカではUpwork、Freelancer、Fiverr、Workpop。日本ではLancersなどがこれにあたるでしょう。こういったサービス上で優秀なフリーランスや、副業しているエンジニアと出会い、彼らのネットワークに入り込むことが重要です。

7.ウェルネスアプリの導入

2017年、ウェルネス、ワークライフバランスの充実を図るアプリやデバイスによって、最終的には個人的なパフォーマンスの管理をするツールが劇的に成長することが予測されています。2018年にかけて、こうしたアプリやデバイスによって蓄積されたデータが、職場環境の改善に活かされるようになるでしょう。

従業員の健康状態の把握のためにしていることと言えば、せいぜいが健康診断。大企業で産業医がいるくらいではないでしょうか。ウェルネスアプリを導入することによって、彼らの健康状態を心身両面から把握し、彼らの状況改善に活かすことができます。

8.人事業務の自動化

HRテック領域は、自然言語処理をはじめとする人工知能やロボット導入によって、劇的な進化を遂げています。Amazon Echo、Siri、Vivなどが話題を集めていますが、その波は人事管理の領域にもすでに及んでいるのです。すでにIBMなどは社内で従業員向けの人工知能システムを活用しており、2017年はまさにHR領域における人工知能元年と言えそうです。人工知能により、人事の業務の多くは自動化され、コストは大幅に削減され、人事部の業務は大きく変わりさらに付加価値が高くなることが期待されています。